ハピスノ
ハピスノ編集長対談

[上村愛子さん×ハピスノ編集長]やりたいという子供の気持ち。背中をそっと押してあげて

ハピスノ編集部 2021.12.01
コロナ禍で1年休刊した「ハピスノ」フリーペーパー。復刊する今季、カバーを務めた上村愛子さんとハピスノ編集長の特別対談。盛り上がりを見せた東京五輪のこと、北京五輪に期待すること。そして、子供たち、パパ・ママへの切なるお願いとは。
  • スケートボードに感じたモーグルとの共通点

    [ハピスノ編集長(以下、編集長)] この冬は、北京五輪のシーズンです。つい先日のようにも感じますが、夏には東京五輪もありました。愛子さんは、東京五輪のお仕事もされてましたよね。

    [上村愛子さん(以下、上村)] はい、私が育った長野 白馬で聖火ランナーをさせていただいたり、コメンテーターとしてテレビ番組のスタジオに呼ばれたり。競技会場にも行きましたよ。女子のサッカーと、こちらも女子のスケートボードです。

    [編集長] 私もウインタースポーツ業界に近しいスケートボードは、とくに興味を持って見ていました。スノーボードのメダリストでもある平野 歩夢くんの冬・夏五輪出場という業界的に大きなニュースもありましたから。

    そして、女子スケートボードの活躍と雰囲気。あれは印象的でしたね! あのあと、スケートボードを始める子供、とても増えたそうです。ギアも売れたし、スクールも満員御礼だったとか。

    [上村] そうらしいですね。今回、スケートボードが新種目として採用されて、実際に会場にも行って感じたのは、コミュニティみたいなものがあるというか。愛に溢れているとか言うと変ですけど(笑)、出場選手はみなその種目が本当に大好きで、それぞれの選手の、その日のパフォーマンスを、お互いにたたえ合うのが当然という雰囲気。

    もちろん、勝負事なんで順位をつけるし、オリンピックなのでメダルも絡むんですけど。でも、そういうの、すごくモーグルに似てるなって感じました。選手たちのなかで、いいパフォーマンスに対しては拍手をしたり、いまのカッコよかったよってたたえ合ったり、素敵な雰囲気でしたよね。

    [編集長] モーグルに似ている、たしかにその通りかも。わたしはモーグルもスケートボードも外から一方的に見ている立場でしたが、あの雰囲気はモーグルでも感じていた気がします。

  • 全日本モーグルチームの男女の活躍に期待大!

    [編集長] 東京五輪ではスケートボードだけでなく、様々な競技で多くの選手が活躍されて、日本は史上最多! 金メダル27個、金銀銅あわせて58個ものメダルを獲得しました。そんな活躍から、通常であれば2年後のはずのオリンピックがもうすぐ。たった半年で、次の五輪が開催されます。

    ウインタースポーツ業界的にもスケートボードの二番煎じというか、五輪を通じてスキーやスノーボードを始めてくれる子供が増えることにすごく期待しているし、私個人としてもものすごく楽しみにしているんです。ちなみに、愛子さんが北京五輪で期待している競技や選手を教えてください。

    [上村] もちろん、筆頭はモーグルでございます(笑)でも、いろいろあります。スケートボードに挑戦した平野くんが、今度はスノーボードでメダル獲得を目指す。そういう、人のストーリーも楽しみじゃないですか!

    [編集長] うん、で、モーグルは?

    [上村] ええっと、自分がやっていたモーグルも期待してますよ。いま、全日本チームがとてもいい状態なんです。

    これまでは里谷(多英)さんが金メダルを獲得したり、どちらかというと、女子の方が注目されていましたが、平昌五輪で(原)大智くんが男子初のメダリストになったり。男子も女子も調子が上がってきているんです。

    とはいえ、コロナがあって、どの国も一緒だと思いますけど、いつも通りの準備はできていないという心配はあります。でも、モーグルチームの子たちはできる範囲で最善を積み重ねているというのは聞いているので。その子たちの、活躍は本当に楽しみです。

    [編集長] わたしも仕事柄、夏に比べて冬のアスリートとの距離の方が近いんです。実際にインタビューさせていただいた選手も出場すると思いますし、彼らの活躍を心から期待しています。

  • やりたいという子供の気持ち、背中をそっと押してあげて

    [編集長] オリンピックって様々な国で開催されるので、時差があってリアルタイムで観戦することは難しいですよね、とくに子供は。そんななかで、自国開催ゆえ、テレビを通してにはなってしまったけど、選手たちの活躍をリアルタイムで肌で感じることができた。

    東京五輪が盛り上がったのって、それも大きな要因のひとつだったと思うんです。そして、スケートボードとか始める子が増えたという…。

    じつは、次の北京五輪でも同じ現象が起きる可能性は大きいと考えています。時差はほとんどないですから。

    [上村] その通りですね。じつは、その前の平昌からだから、3大会連続、リアルタイム観戦ができる環境なんですよ。北京との時差もたった1時間だから。

    [編集長] そんな、ある意味、日本人にとって観戦環境のいい北京五輪。子供たちに、そして、その親御さんたちにどんな風に観てほしいですか?

    [上村] オリンピック観戦に時差があったという理由だけでなく、じつは、わたしはテレビでスポーツ観戦をする機会ってあまりなかったんです。すぐ、スキーに出会えましたし、ずっとモーグルでしたから。

    でも、今回の東京五輪もそうだし、平昌もそうですけど、引退して、テレビのお仕事をするようになって、こんなに魅力的なスポーツがあるんだって気付くことが多くて。

    私はひたすらスキーでしたけど、もちろん、モーグルに出会えてよかったし、感謝もしていますけど、これをやってみたい!と思うヒントって、アンテナを張っていれば張っているだけ見つかるのかなって。

    子供たちが冬のオリンピックを見たら、雪の上に立ってみたいなとか、氷の上を滑ってみたいなとか、やってみたいという気持ちが沸き上がってくる可能性は大きいと思うんです。その気持ちになったときに、素直にご両親に伝えてほしい。今度、雪山に行ってみたいって言ってほしい。氷の上で滑ってみたいとか、お父さんとお母さんと競争したい!って遠慮なく言ってほしいんです。

    もしかしたら、オリンピックが新しいスポーツに挑戦するチャンスなのかもしれない。五輪を目指そうって話ではなくて、いろんなことに興味を持って、いろんなことをやってみてほしい。そして、親御さんも、それを聞いたときに、いろいろ手間はかかりますけど、子供さんの背中をそっと押してあげてくれたらうれしいです。

    [編集長] その通りですね。私は業界人の立場から、オリンピックはスキー&スノーボード復権のチャンスと考えているんです。だから、パパ・ママに、やりたい!と思った子供の意思を尊重してあげてほしいと、愛子さん同様、切に願っています。


    ■上村愛子さん
    1998年長野五輪から5大会連続で五輪出場。最高位はバンクーバー五輪とソチ五輪の4位。ハピスノ編集長が主催する「家族対抗!雪上運動会」には2011年から10年連続で参戦。昨年はコロナ禍で中止だったが、今季は開催予定。

    ■竹川紀人(ハピスノ編集長)
    ファミリースキー関連メディアのディレクターをしてはや10数年。「ハピスノ」は3年前に創刊し、今季で4シーズン目。現在、雑誌でスノーリゾート企画監修や「トラベルjp」「tenki.jp」「ウレぴあ総研」などでweb記事執筆中。

ハピスノ編集部
ファミリーを対象にしたスノーリゾート取材本数“自称”日本一の編集部。取材のモットーは、実際に子供を連れて、そのスキー場を余すことなく体験すること。そうして見えてくることを紹介したい! この冬も「ハピスノ応援団」の団員とともに、全国各地のゲレンデに出没する予定。