【編集長対談】スキー&スノボ滑走時、子供にヘルメットは必要? 競技経験を持つママ座談会

今回は、橋本通代さん(ソルトレイクシティ五輪ハーフパイプ日本代表)、大瀧悠佳さん(全日本スキー技術選手権大会出場)、太田有紀さん(プロスノーボーダー)。スキー&スノーボードの競技経験を持ち、現在は、親として雪山に立つ3人のママに、ヘルメットについて率直に語ってもらいました。
もし、ヘルメットをしていなかったら…

[ハピスノ編集長 竹川紀人(以下、竹川)]最近はスキー場でも、安全の啓蒙として「ニット帽よりヘルメットを」という発信が増えてきましたよね。とはいえ、まだまだ浸透しているとは言い難い。迷っているパパ・ママも多いと思います。
今日、みなさんには競技者として、そして、親としての視点から、ヘルメットについて本音で語っていただきます!
まずは、みなさんに聞きたいのですが、競技をしてきたなかで、「これはヘルメットがなかったら危なかったな」と強く感じた瞬間ってありますか?
[橋本通代さん(以下、橋本)]正直に言うと、ヘルメットを着用していなかったころは、毎年のように脳震盪を起こしていました。自分がどこにいるのか分からなくなる状態になることが何度かあって…。
大会でヘルメット着用が義務化されてからは、そういったことがなくなりましたが、いま、振り返ると、ヘルメットは本当に重要だったと感じています。

[大瀧悠佳さん(以下、大瀧)]大会出場時はヘルメット着用が義務だったので、着用に対するストレスはあまりないんですよね。
しかも、子供のころ、朝のフリー滑走のときに友達が転倒して、石に頭をぶつけたことがあったんです。本人は無事だったんですが、ヘルメットが大きくへこんでしまって…。そのときに「練習や大会以外で滑るときも、絶対にかぶらなきゃいけない」と強く感じたのを覚えています。
[太田有紀さん(以下、太田)]わたしはスーパーパイプの公開練習中、凍ったアプローチでコントロールを失い、頭からボトムに叩きつけられました。ヘルメットは割れて、記憶も一部飛びましたが、大きな怪我にはなりませんでした。もし、ヘルメットをしていなかったら…と考えると、いまでも怖くなります。
[竹川]話を聞きながらゾッとしました。3人の話から改めて感じたのは「競技レベルだから危ない」のではなく、「雪上にいる以上、誰にでも起こり得る」ということでした。実際に命や将来に関わる場面を経験してきたからこそ、みなさんの言葉には重みがありますよね。
親になって気付いた「守れる準備」の大切さ

[竹川]みなさん、親になってからヘルメットに対する考え方や判断基準に変化はありましたか?
[橋本]そうですね、変わりました。子供はこれからの人生が長いから! 子供の体は成長途中で、頭部も大人より衝撃に弱い状態です。さらに、周囲への注意力や危機回避能力も発展途上。だからこそ、物理的な防護が重要になると考えています。
[大瀧]子供にはヘルメットの方がいろいろと便利なんですよ。ゴーグルが曇りにくくて装着も楽とか。安全面も含めて、最初から迷わずヘルメットにしました。
意外と知られていないのが、ヘルメットの機能面でのメリットですよね。ゴーグルとの一体感があり、ニット帽よりフィット感がいいので、ゴーグルの曇りを軽減できるんです。

[太田]うちは「この子の未来を預かっている」という感覚が強くなりました。転ばせない努力には限界があるからこそ、なにかあったときに守れる準備をしておきたいと思うようになりましたね。
[竹川]お話を聞いていて印象的だったのは「転ばせない」よりも「なにかあったときに守れる準備」を大切にしている点です。成長途中の子供は、体も判断力もまだ発展途上。だからこそ、安全性はもちろん、曇りにくさや着脱のしやすさといった機能面も含めて、ヘルメットという選択がごく自然になっているのだろうなと感じました。
「危ないから」じゃない。子供への伝え方の工夫

[竹川]実際にお子さんには、なぜヘルメットをかぶるのか、どんなふうに伝えていますか?
[橋本]我が家ではルール化していて、ヘルメットをかぶらなければ、リフト券は渡しません。必要性を感じてもらうために、脳震盪を題材にした映画「コンカッション」を一緒に観たこともあります。
家庭内でのルールとして明確にすることで、子供も理解しやすくなりますし、また、映像を通じて脳へのダメージについて学ぶことで、子供自身が納得して着用するきっかけになると思います。
[大瀧]うんうん。子供自身に気付いてもらうことは大事ですよね。わたしは自然相手のスポーツだから、安全第一でいこうと伝えています。少し滑るだけだから…とかぶらない子もいますが、うちのスクールでは「それは全国大会に出てからね」とルールを決めています。

[太田]なるほど。わたしは「危ないから」ではなく「楽しく最後まで滑るためだよ」と伝えています。小さいころから当たり前にかぶっていたので、特別なものという感覚はないですね。ヘルメットを自分で選ばせることも大事にしています。
いまはカラフルなデザインやキャラクターものなど、子供が喜ぶヘルメットも豊富に揃っています。子供自身に選ばせることで、着用への抵抗感が減るし、むしろ、楽しみになることもあるかと。
[竹川]「無理にかぶらせる」ではなく、子供自身が納得できる形をつくっているんですね。ルールとして明確にすることがあれば、ユーモアを交えて伝えるなど、“楽しく滑るための準備”として自然に身につけさせる工夫もある。
大切なのは、“怖いから”ではなく、前向きな理由を伝えることなのかもしれませんね。
「嫌がりそう」「動きにくそう」その不安は本当?

[竹川]ヘルメットって、子供が嫌がりそうとか、動きにくそうとか、親としては不安もありますよね。そのあたり、正直どう感じていますか?
[橋本]昔はヘルメットをかぶる人が少なく、抵抗がありました。でも、いまは軽くて種類も豊富。車のシートベルトと同じ感覚ですね。
最近のヘルメットは軽量化が進み、長時間着用しても首への負担が少ない設計になっています。デザインも多様化して、子供が「かぶりたい」と思えるような商品が増えていると感じます。
[大瀧]不安に思うなら、まずは親がかぶってみてほしいです。実際かぶってみると動きにくさは感じないし、むしろ安心感があります。
親自身が体験することで、子供への説得力も増しますしね。実際にかぶってみると、想像していたより快適だと感じる方が多いですよ。

[太田]わたしも最初は不安でした。でも「なにかあったときに後悔しないか」と考えたら、選択基準が変わりましたね。
[竹川]不安に感じるポイントもありますが、まずは、親も実際に使用してみることは大事! いまのヘルメットは機能面もかなり進化していて、“安全のために我慢するもの”ではなく、安心して楽しむための道具になっている。まずは、大人が体感してみることが、子供へのいちばんの説得になるのかもしれませんね。
これから雪山デビューするファミリーへ

[竹川]最後に、これから雪山デビューするファミリーに向けて、ヘルメットについて、いちばん伝えたいことを教えてください。
[橋本]ヘルメットは、いまや自分のスタイルを出せるアイテム。お気に入りのステッカーを貼るなど、家族で楽しんでほしいです。
[大瀧]自転車と同じように、まずは安全第一で。お店でいろいろかぶってみて、自分に合ったヘルメットを探してみてください。

[太田]ヘルメットは“怖いから”ではなく、“安心して楽しむための準備”。家族なりの安心の形を考えるきっかけになればうれしいです。
[竹川]みなさんの話を聞いていると、ヘルメットは特別な装備というより“楽しく続けるための当たり前の準備”なんだと改めて感じました。
とくに、体も判断力もまだ発展途上にある子供にとっては、転ばないことよりも、“転んだときに守れるかどうか”が大切。
ヘルメットをかぶる・かぶらないに正解はないのかもしれません。でも、“もしものときに後悔しない選択”を考えることは、雪山デビューの大事な一歩だと思います。家族それぞれのスタイルで、安心と一緒に雪山を楽しんでほしいですね。
この冬、ニットからメットへ_まとめ

3人の話を通して見えてきたのは、“ヘルメットは怖いからかぶせるもの”ではなく、安心して雪山を楽しむための準備だということでした。とくに、体も判断力もまだ発展途上にある子供にとっては、どれだけ気をつけていても防げない場面があります。
だからこそ、できる備えとして、ヘルメットを選ぶことは、親にとっても子供にとっても安心につながる選択なのかもしれません。

【橋本通代さん】
ソルトレイクシティ五輪ハーフパイプ日本代表。引退後は多くのキッズスノーボーダーを育て、五輪出場者も多数。キッズ育成の第一人者として知られる。現在は、軽井沢在住。夫婦で3つのスクール(長野・群馬・岐阜)を運営している。
【大瀧悠佳さん】
全日本スキー技術選手権大会出場。現在は「USMR SKI SCHOOL」COOを務める傍ら、STARリズムトレーニングのインストラクターとして、スキーを始め、様々なスポーツジャンルのジュニアたちにトレーニング方法を教えている。
【太田有紀さん】
プロスノーボーダー。ハーフパイプを中心に競技経験を積み、現在はキッズ~ジュニア世代の育成やスノーボードの普及活動に尽力。「NERiNE Snowboard Academy」「結珠LIFE」を主宰する傍ら、「Futureheadプログラム」のヘッドコーチも務めている。
