ハピスノ
ハピスノ編集長対談

[橋本通代さん×ハピスノ編集長]子供たちと世界をつなぐ大会「INDY PARK JAM」に迫る

ハピスノ編集部 2023.03.04
橋本通代さんといえば、キッズスノーボーダー育成の第一人者。キッズキャンプ「KIRARA KAMP」を主宰したり、スクールを運営したり。

自身の五輪出場の経験を糧に、その魅力的なスノーボードというスポーツを子供たちに伝えるため奔走する日々をおくっています。今回は3年ぶりの開催となる、子供たちと世界をつなぐ大会「INDY PARK JAM Rookie Fest 2023」についてお話を伺いました。
  • “子供たちが主役になる大会”を作る

    [ハピスノ編集長 竹川紀人(以下、竹川)]ハピスノとして今回、広報的な部分で「INDY PARK JAM Rookie Fest 2023(インディーパークジャム ルーキーフェスト2023。以下、IPJ)」に協力させていただいています。

    ただ、ご存じのように、ファミリースキーの間口を風下から広げることを第一義として展開してきたハピスノは、スキー&スノーボードを競技としてフィーチャーしたことはほぼありません。

    もちろん、橋本通代さんがキッズスノーボーダー育成という部分に注力されてきたのは存じ上げていましたし、メディアとして、スノーボードを子供が憧れるスポーツに昇華するというか、かっこいいレジャーとしての一面を取り上げるのも使命ではないかと。

    そこで、今回のハピスノ編集長対談をセッティングさせていただいたわけですが、改めて、IPJが開催されるまでの歴史などを教えていただけますか?

    [橋本通代さん(以下、橋本)]IPJはもともと「KIRARA KAMP」の最後に実施している発表会に端を発しているんです。

    [橋本]KIRARA KAMPとは2泊3日のキッズキャンプ。わたしがオリンピックに出場したあとに、自分自身がスノーボードで学んだことを、大好きな子供たちに伝えていきたいと考えて始めました。

    「スノーボードを教材に、子供たちに一生懸命取り組むことのすばらしさを伝える!」

    そんな意気込みでスタートしたイベントですが、その最終日に“3日間の冒険”の成果をお父さん・お母さんに見てもらう発表会を実施したところ、大盛況だったんです。キャンプの成果を見せる発表会を、子供たちが一番ワクワクして望んでいたんですね。

    KIRARA KAMPの参加者だけでなく、日頃の練習の成果を発表する場を欲している子供たちはもっとたくさんいるはず。でも“子供たちが主役になれる大会”って当時はあまりなかったから、それなら、そんな大会を作ってしまえ! とスタートしたのがIPJです。

    [竹川]たしかに、当時、1カテゴリーとして子供が出場できる大会はありましたが、子供だけの大会というのはほぼ皆無。子供もパパ・ママも待ち望んでいた大会の誕生だったわけですね!

  • 成長できる大会から世界とつながる大会へ

    [竹川]IPJ のスタートは2006年ですよね。IPJの発端がKIRARA KAMPの発表会となると、いまや、世界大会へのインビテーションを受けられる大会に成長。大きく変わってきたように感じます。

    [橋本]おっしゃる通り、きっかけは発表会でしたから、当初は“子供たちが主役になれる大会”がキーワードでした。だから、上手な子だけを褒めるわけではなく、レベルに関係なく、成長を褒めてあげるようにはしていましたね。

    また、アルツ磐梯のディガーさんたちは本当に腕がよくて、パークアイテムのクオリティの高さにも定評があったんです。いつのまにか、滑ることによって“子供たちが成長できる大会”と認識されるようになり、参加者のレベルもどんどん上がって。

    そのあたりから、子供たちのさらなる成長のためには“世界とつながる大会”である必要を実感するようになってきたんです。

    [橋本]わたし自身、スノーボードで世界とつながって、最後はオリンピックにまで出場させてもらいました。そんな可能性を子供たちに実感してほしい。そう考えると、IPJ を“世界とつながる大会”とすることは急務だったんです。

    最初は副賞として、カナダのサマーキャンプ「CAMP OF CHAMPIONS」に参加する権利を付与したりしていたのですが、2012年からはIPJで優勝すると、なんと、18歳以下の世界一を決める国際大会「WORLD ROOKIE FINALS」へのインビテーション(出場資格)を受けられるようになったんです。

    [竹川]すごい進歩ですね! でも、その一方で、海外への遠征費用は自腹。結果、キャンセルせざるをえない子もいたとお伺いしています。その点について、今回の開催にあたって大きな変更があったと聞いていますが、詳しく教えてください。

    [橋本]コロナ禍ということもあり、この3年間、IPJを開催することができませんでした。ようやく、大会のリスタートをしようと考えられるようになって動き出したところ、特別協賛を獲得することができたんです。

    株式会社ユークリッド・エージェンシー様。ゴールデンボンバーをはじめ、多くのアーティストを抱える芸能事務所です。

    [竹川]芸能事務所とスノーボード。あまり接点はないように感じるのですが…。

    [橋本]石森社長からは「スポーツもエンターテインメントも、人々に勇気や感動を与えるもので共通点は多い。今回は、スノーボードを通じて、世界に羽ばたく子供たちを応援したい」とお話を頂戴し、ひとつの課題であった遠征費用のサポートをお願いしました。

    結果として、IPJの優勝者には世界大会であるWORLD ROOKIE FINALSの出場権、優勝賞品としてオーストリアまでの往復航空券をお渡しできることになりました。正直、こんな大会は国内にはほかにないですね。

    [竹川]WORLD ROOKIE FINALSへのインビテーションに加えて、エアまで! スノーボードは正直、お金のかかるスポーツですし、これで名実ともに“世界とつながる大会”になりましたね。劇的な進化だと思います。

  • IPJはいまや世界への登竜門!

    [竹川]改めて「INDY PARK JAM Rookie Fest 2023」の参加資格や大会の中身を教えてください。

    [橋本]IPJの競技種目は、オリンピックでも採用されているスロープスタイルです。出場資格は5~18歳。カテゴリーとしては、5歳~2008年1月1日生まれがグロム、2005年1月1日~2007年12月31日生まれがルーキーです。

    ちなみに、IPJはアジアで唯一開催されているWORLD ROOKIE TOURの一戦です。優勝すれば、WORLD ROOKIE FINALSに出場でき、さらに勝つと、今シーズンはX-GAMESにも出場できるんです。なお、そのシーズンによって、X-GAMESがFIS W杯になったりします。

    [竹川]IPJで勝って、WORLD ROOKIE FINALSへ。そこから、さらなる飛躍を遂げた著名なスノーボーダーを教えてください。

    [橋本]五輪出場経験がある子だと、鬼塚 雅や岩渕麗楽、片山來夢や角野友基。北京五輪でメダルを獲得した冨田せなや村瀬心椛もIPJの優勝者です。

    [竹川]IPJはまさに世界への登竜門ですね!

    [竹川]今年の参加者は何人ぐらいですか?

    [橋本]定員は50人だったんですけど、怪我とかで出場できない選手もいて、最終は45人ぐらいになりそうです。

    [竹川]出場選手のなかで、気になる有望選手を教えてください。

    [橋本]私のイチ押しは北山博仁選手です。まだ、小学6年生ですが、昨シーズンのJSBAポイントランキングで4位となり、公認プロスノーボーダーに。Rakuten Sportsとマネジメント契約を結ぶなど、期待の選手です。

    ほかにも、多くの有望な選手が出場しますし、たぶん、未発掘の子も。この大会で化ける子も多いんです。いずれにしても、これから日本を代表して世界に羽ばたいていく選手が集結していることに間違いはないと思います。

  • 転換期を迎えたIPJ。次なる施策は?

    [竹川]IPJが名実ともに、世界への登竜門であることはわかりましたが、今後の方向性についてもお聞かせください。

    [橋本]じつは…、悩んでいます。ここ数年で、世界につながる大会は増えてきていますし、大会シーンも目まぐるしく変化しているんです。

    東京五輪の影響もあってか、親はもちろん、子供たち自身もオリンピック出場を強く意識するようになってきたと感じます。

    IPJとしての大会のあり方も転換期に来ているのかもしれない。時代に合わせて、子供たちが輝ける場所として、IPJはどうあるべきかといつも考えています。

    世界につながる大会が増加傾向にあることを考慮すれば、もっと、足りない部分に力を注いだほうがいいのかもしれない。たとえば、もっと子供たちが輝けるショー的なイベントに転換してもいいのかもしれないですね。

    [竹川]わたしは常々、スノーボードの魅力を広く伝えられるイベントがないと感じていました。以前の「TOYOTA BIG AIR」や「NISSAN X-TRAIL JAM」のような、お金を払ってでも見に行きたいと感じる、ショー的なイベントが皆無なんです。

    テレビをはじめとした様々なメディアに取り上げられることもないから、スノーボードの魅力を知らない子供たちも多い。これは業界にとって、大きな損失です。

    協賛社のユークリッド・エージェンシーとのタイアップをさらに推し進め、スノーボードと音楽を融合したようなイベントを作り上げてくれたら、業界にとっては大きな契機となるのではないかと感じました。

    橋本通代さんなら、そんな夢を現実のものとしてくれそう。今回、改めてお話させていただき、今後の発展にさらなる期待を感じずにはいられませんでした。

    [橋本]ありがとうございます!

    [竹川]最後に、出場する選手や観戦に来てくれる方にメッセージをお願いします。

    [橋本]参加者の方にとっては、すごいチャンスだと思っています。世界大会のインビテーションと往復のエアチケットまでカバーしていただける大会なんて、ほかにはないので。

    WORLD ROOKIE TOURは18歳までとはいえ、世界のトップが集まる大会ですし、大会だけでなく環境に関するワークショップも行われるなど、学ぶことが本当に多いです。ぜひとも、勝ち取ってほしいですね。

    観戦される方には、大人顔負けの日本のトップレベルを体感していただきたいです。次回のオリンピックに出場する可能性の高い選手も多いですし、見応えはばっちり。世界に挑戦しようとする姿を観て、ぜひ元気をもらってください。

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    橋本通代
    ソルトレイクシティ五輪ハーフパイプ日本代表。軽井沢在住で、夫婦で「ライオンスノーボードスクール」(軽井沢プリンスホテルスキー場)「スクールオブスノーボード」(軽井沢スノーパーク/めいほうスキー場)、3つのスクールを運営。キッズキャンプ「KIRARA KAMP」を主宰する。

    竹川紀人
    ファミリースキー関連メディアのディレクターをしてはや10余年。現在、「ハピスノ」編集長のほか、「tenki.jp」や「トラベルjp」のスキー場関連情報のディレクターも兼務。ファミリー対象の雪上イベントも多数主催。2児の父。

ハピスノ編集部
ファミリーを対象にしたスノーリゾート取材本数“自称”日本一の編集部。取材のモットーは、実際に子供を連れて、そのスキー場を余すことなく体験すること。そうして見えてくることを紹介したい! この冬も「ハピスノ応援団」の団員とともに、全国各地のゲレンデに出没する予定。